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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第2章 転生

「そんなに知りたいのなら、元気になったら、また連れてってやるよ」
 梨花は小さく首を振る。あのときのことは、もう二度と思い出したくない。だが、記憶は忘れようとしても梨花の頭から離れないだろう。未来永劫、梨花の心を責め苛むだろう。
 だって、自分は人を殺してしまったのだから。
 梨花は自分の両手をひろげ、じいっと見入った。
「私、人を殺したの」
 えっ、と、少年が声を上げる。
「まさか、嘘だろう」
 梨花のように幼い少女が〝人殺しをした〟と口にして、確かに信じる者の方が少ないだろう。
「先刻、あなたが私に呑むようにと勧めてくれた薬。私、あれが一瞬、毒薬に思えてしまったの。私が毒で人を殺したから、だから、あの薬が毒に見えたのかもしれない」

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