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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第2章 転生

 梨花は両手で顔を覆い、すすり泣いている。そんな彼女を静かに見つめ、少年は言った。
「俺はお前が人を殺す―そんな怖ろしい真似をしでかすような奴には思えないんだ。だけど、お前自身がそう言うのなら、それは恐らく真実なんだろう。教えてくれ、お前がそうしなければならなくなった理由とは何だ?」
「私の父と母をその男たちが殺した。いや、そやつらが殺したのは両親だけではない、私を育ててくれた乳母も、恐らくは屋敷にいた奉公人たちの何人かも殺されたはず」
「―」
 しばらく少年から応(いら)えはなかった。やはり、人殺しなどするこの身は、この少年からも嫌われてしまったのか。そう思った時、梨花の背に回された少年の手に力が加わった。
「信じるよ」
 今度は梨花が愕く番だった。
 眼を見開く梨花の前に、真摯な面持ちの少年がいた。

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