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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第3章 運命の邂逅

    運命の邂逅

 梨花は唇を噛みしめた。
 何なの、この男。
 あまりの悔しさに痛いほど唇を噛みしめたせいか、口の中に酸っぱいような鉄の味がひろがる。
 見かけは痩せぎすで、生っ白い白餅のような男なのに、やたらと逃げ足だけは速いのが余計に小面憎い。
「待て~、待ちなさい。誰か、そこの男を捕まえて」
 大声を上げながら全速力で走るが、いかにせん、幾ら相手が人さし指でちょいと突けば、すぐに倒れそうな優男でも、とりあえず大の男ではある。
 十六の少女にすぎない梨花の脚とでは所詮、比べものにはならなかった。
 それでも、梨花は諦めずに追いかけた。
 だって、あの巾着には、お父さん(アボジ)の薬を買うお金が入ってるんだもの。

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