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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第3章 運命の邂逅

 二人は、しばらく横たわる父を黙って眺めていた。
「どうする?」
 押し潰されそうな沈黙を先に破ったのは、ソルグクであった。
「私、とにかくお医者さまのところに行ってくる。今日の売り上げ全部でも到底足りないと思うけど、それを前払いということで診察して貰えないかって頼んでみようと思うの」
 梨花が断固として言うと、ソルグクも頷いた。
「俺も後で勤め先の方に行ってみるよ。今月分の給金を前借りできないかって訊いてみる」
「お兄ちゃんの分と私の分を合わせれば、何とかなるかもしれない」
「足りなければ、今月だけじゃなく来月分も前借りするまでさ」
 兄と妹は眼と眼を合わせ、頷き合った。
 梨花が家を出ようとしたのと、表で訪(おとな)いの声がしたのは時を同じくしていた。

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