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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第3章 運命の邂逅

 医者はソギョンをひとめ見ると、眉を寄せた。
「いつから、こんな状態に?」
 そこで、ソルグクが一刻以上前に烈しい頭痛を訴え苦しみ続けた挙げ句、高鼾をかいて眠り始めたのだと説明する。
「せめてまだ意識があるときに知らせがあれれば、まだ手の施し様があったものを」
 医者は痛ましげに呟くと、ソギョンの脈を取り、丁寧に診察してゆく。その後ろに座り、梨花は気が気ではなかった。
 父が苦しんでいる間、梨花は家にはいなかった。しかし、側にいた兄を責められはしない。
 恐らく梨花が兄の立場であっても、すぐに医者に知らせなかっただろう。いや、知らせたくても、知らせられなかったのだ。町の医者に診せるのにも、莫大な金が必要となる。だが、この家にそのような金はないのだ。

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