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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第3章 運命の邂逅

 宮廷医官にと国王から直々に請われ、丁重に辞退したという逸話からも、その清廉潔白な人柄が偲ばれる。
「あれほど高名な方がわざわざお父さんを診に来て下さるなんて信じられない」
 梨花が溜息混じりに言っても、ソルグクは仏頂面だった。
「天下の名医宗俊秀がこんなその日暮らしの俺たちの許に来るなんぞ、普通ならあり得ねえ。俊秀は金では動かない、無欲な医者だと言われるが、それでも、ここまで来させるには、それなりの金と人脈が必要なはずだ。あいつ、さぞかし金持ちの坊ちゃんなんだろうな。海棠、お前、あの男とどういう関係なんだ?」
 えっ、と、梨花は我に返って兄を見た。
「おい、どうしたんだ? お前、変だぞ? 俺の話もろくに聞いてなかったのか。まさか、あの気障ったらしい野郎に誑かされてるんじゃないだろうな」

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