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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第3章 運命の邂逅

 父や母が自分より梨花に笑顔を向ける度、つまらない羨望と嫉妬を感じたことさえあった。
 それでも、後をついてくるはずの梨花の姿が少しでも見えなくなると、ソルグクは忽ち不安になり、探し回ったものだ。
 あの小さな娘の愛らしい笑顔や笑い声は、ソルグクや父母の心をどれだけ明るく温かなものにしてくれたことか。
 十年前、梨花を拾ってきた日、両親は梨花をすげなく追い出すこともできた。事実、両親はソルグク一人を育てるだけでも精一杯だった。それほどの貧しさの中で、他人の子をもう一人育てるのは正直、不可能に近かったといえるかもしれない。
 それでも、父や母は否とは言わなかった。いや、恐らく、血だらけの夜着を着て意識を失っている梨花を見たときから、両親はこの憐れな娘を育てるつもりでいたに違いない。

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