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第5章 甘い香りとしょっぱいキス
しばらく待っていると、奥からコック姿のおじさんが歩いてきた。
「やあ、君たちが旭ヶ丘高校の2年1組の生徒さんだね。私はここの店長をやっている菱野だよ、よろしくね」
さすが店長、物腰柔らかい対応だ。
金髪兄ちゃんとは大違いだぜ。
「文化祭までご迷惑かけると思いますが、よろしくお願いします」
挨拶を済ませると、菱野さんはオレたちをテーブルに案内した。
「文化祭担当の菅生(すごう)くんがもうすぐ来るから、ここで待っててくれるかな?」
「え、店長さんが担当じゃないんですか?」
「僕は店から離れられないからね。菅生くんはパティシエ見習いだけど、十分腕はいいから。安心して頼っていいよ」
そう言うと、菱野店長は行ってしまった。
