359°
第5章 甘い香りとしょっぱいキス
店の裏の駐車場に行くと、一台の黒い車が停まっていた。
「これ、なんていう車ですか?」
「ダイハツのタントだよ」
「へ~…ロックやってる人は、もっといかついの乗ってるかと思った」
「スポーツカー系とか?」
「そうそう!」
高藤さんはクスッと笑った。
「まぁ昔は…ロードスターに乗ってたけどね。あ、乗って」
そう言われ、オレは助手席に座った。
中は広々としていて、また高藤さんと同じ香りがした。
エンジンがかかると、オーディオが青く光った。
「家、どこ?」
住所を告げると、高藤さんはカーナビにオレの住所を登録した。
車は静かに走り出す。