美人妻は性欲旺盛っ!
第9章 アルバイト 2
「平気だってば」
平気なわけない
嬉しいのに強がって
好きだから素直になれなくて
自己嫌悪しちゃって
『俺がつれてきたくない』
だ――めだってば………
犬であれば
耳がぴくっとなる所だ
鼓膜に届いた声が心地よくて
どんどん浮かれてしまう
「うん…」
『なんだ「うん」って?
俺は真面目に話してるんだぞ
怒ってるのか?』
「怒ってるよ…」
ううん怒ってない…
『ね~浅葉サ~ン!
誰と話してるんですかぁ?
わたしらも構って下さいよ~?』
『右京、今夜ホテル行こうか』
それは
同席してる女にも
確実に聞こえただろう
『今日は早く上がれる
迎えにいくよ』
『えー!!?
ホテルって今言いましたよね!?
だめですよ浅葉サン
奥さんいるのにそんなコトしたら!
可哀相ですよ!』
うるさいよさっきから
どうせもしかしたら自分も
あわよくば自分も
って思ってるのだろうに
あんまりイイ男だから
抱かれてみたい♪
興味津々なの丸分かりだ
カワイソーって
そこは男を非難する所であって
面白がるとこと違う
『どう?』
「あ、えっと…」
ゆきくんの魂胆が見えた
わざと聞かせてるのだ
でも私は恥ずかしくて
なかなか言えない
『悩んでるね。嫌?』
「い、行きます…」
『ホント?ありがとう』
外野が色めき立つ
大方不倫の交渉現場を目撃した
とでも勘違いして
興奮さめやらないのだろう
相手だれって嫁さんだよ
問題なんかあるもんか
小うるさい女共の
鼻を明かしてやった
社内で噂されて
向かい風になるかもしれないのに
ゆきくんはくっくっと笑ってた
私は笑えなかった
胸の辺りをぎゅって押さえる
ドキドキして苦しくて
なのに嬉しくて
全然それどころじゃなかった