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美人妻は性欲旺盛っ!

第23章 ひとりの戦い







「おはようゆきくん」

「今日は天気悪いね」

「体調はどう?
私は元気だから心配しないで」

「お仕事頑張って」

「またメールするね」

「電話出てくれたら嬉しいな」

「また夕方にね」









 受付嬢に呼び止められ、預かっていたという手紙を受け取る





 何十通目かになるそれには、切なすぎる想いがストレートに籠もった



 ――話したいです



 そう綴ってあった






 会いたいです
 話したいです

 右京はそれしか書かない

 書く事はたくさんあるだろうに意固地なくらい何も書かない

 そう、意固地なまでに右京は手紙やメールで言い訳をしようとせず、ゆきと直接話そうとしてくる






 ゆきはそんな右京の意固地な部分でさえかわいいと思っていた






 だめなのだった

 ゆきは強固な精神で右京に冷たく当たり続けた

 けれど右京の目、頬、口
 細くサラサラの髪、甘い匂い

 ゆきは見つめられるだけで、胸の奥が弛んでしまう






「お疲れ様ゆきくん」
「お仕事どうだった?」
「今日は暑かったね」
「汗かいたんじゃない?」
「また一緒にお風呂入りたいね」
「ね、これからご飯行こうよ」
「話そうよ」






「明日出勤するから」






 明日は土曜日

 ゆきはバカだった

 言わなければ右京はわからないのに自分から言っていた






「うん、わかった」
「こいよ」
「うん、くるよ」






 一人になってから、ゆきは顔を右手で覆い隠した

 バカかと思った

 けど、焦がれる何かが
 ゆきをどうしようもなくさせる

 右京を嫌えない
 あれが、本当に、かわいい



 毎日一通の手紙と朝夕欠かさずゆきに会いにくるブレない姿

 しなやかで芯のある内面



 くらっとしてしまった
 ほだされてしまった
 かわいいと思ってしまった

 わかっているのに
 口が……滑ってしまった



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