美人妻は性欲旺盛っ!
第23章 ひとりの戦い
ゆきは待った
帰ろうとしないゆきを、石田はたまらない気持ちで見守った
最悪の場合は自分が引きずってでも連れて帰るつもりであった
ゆきは二時間待った
ゆきは人の往来を
ぼーっと眺めていた
高校生の時、よくそうしていた
意味があるわけでもない
とある教室から、ぼーっと窓の外を眺めるのが好きだった
外では、昼休み、生徒が腹ごなしに運動していた
楽しそうだと思った
ゆきは羨んでいた
ゆきは自分がひどく恵まれた人間でありながら、一方で強烈に求めるようになっていた
何かが足りない
勉強もでき、運動もでき、女もいるのに満たされない
眺めて、ゆきは、捜していた
ずっと捜していた
今ならわかる
本気で好きになれる人と、心から自分を好きになってくれる人だ
誰かを本気で愛したい
心底、愛したい
よくゆきはぼーっとしていた
退屈な毎日のあの頃、そんな事ばかりを考えていた
二時間とちょっと、右京はのろくさと姿を現した
ゆきはタクシーを呼んだ
右京の顔は赤く、頬は体温で膨らんで腫れぼったく見える
足取りは変でふらふらまっすぐ進めていなかった
ゆきが歩いて近寄ると鼻水をすする音が聞こえてくる
夏が近いが、暖かいカッコをしている右京
ゆきは驚かなかった
「帰れよ」
タクシーが到着した