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美人妻は性欲旺盛っ!

第23章 ひとりの戦い







 驚かなかった

 ゆきは本当に、右京の何も疑ってなかった



 右京は泣きそうな顔だ
 あるいは不服そうだ



 だがゆきにはそんな事知ったこっちゃなかった

 羽のように軽い右京を引っ張ってタクシーに乗せる

 手に取った右京の体温は沸騰した湯のように熱く、握っているだけで決心や覚悟など溶かされそうだった



「運転手さ…」



 ゆきは出ようとしていた
 自分がタクシーに乗るつもりは少しもなかった

 握力が200くらいあった
 右京が手を離さない



「行っちゃ…やだ」
「離せよ」
「いて…お願い」



 ゆきはタクシーに乗った

 右京が行き先を告げる
 それは我が家ではなく、右京の実家の住所だった

 右京は一人が耐えきれず実家で家族と暮らしていた
 でもそれは恥じる事じゃない

 沈黙が下りる車内
 到着するまで右京はしきりにごめんなさいと謝っていた



「ごめんなさい…」
「いいから」
「違うの、ごめんなさい…
病院に…風邪で…」
「うるさい」
「ごめんなさい…」



 それでも謝る右京を見て、熱で相当弱ってるんだなと思った

 ゆきは窓に顔を向けたまま、離してくれない右京の手を強く握った

 熱くて柔らかい手を何度も無言で握ってやった

 右京は黙りこくって熱よりも赤い顔で小さく俯いていた



 タクシーが右京の実家につくとゆきはお金を出した

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