天使で悪魔なセラピスト
第4章 斉木センセイ
優しいのに、どこか不安そうで寂しげな蓮の視線に、ユナはどきりとすると同時に、ギュッと胸の奥をきつく掴まれたような痛みを感じた。
首を横にふって、少し慌てるように、
「い…嫌じゃ、なかったです」
と答えていた。
「…本当に?」
「あの、私、…さっき先生に会うまではホントに、…男の人が怖くて怖くて…」
立ち止まったまま、ユナは夢中で告白していた。
「自分でも、原因は分かってるんです。小さい頃、義理の父に酷いことをされてきたせいだって。」
蓮はじっとユナを見つめたまま、彼女の話を聞いていた。
「そんな自分を変えたくて、色々頑張ったんだけど、うまくいかなくて、…なのに不思議なんです。出会ったばかりなのに、先生はちっとも怖くなくて、…えっと、…」
「…フ。」
甘く微笑んだ蓮の手のひらが、ユナの頭の上でポンポンと弾んだ。
「安心したよ。…キミを怖がらせていないと分かって。」