天使で悪魔なセラピスト
第6章 ユナの恋心
ユナはベッドから起き上がり、コートを着て外に飛び出した。
息咳切って駆け抜ける、冬の夜の街は身を刺すような冷たさなのに。
ユナは何も感じなかった。
そして。
ついに辿り着いたクリニックの押し戸の前に立ち。
ハアハアと肩で息をしながら、その視線を上げた。
クリニックの明かりは消えていたけれど、奥の部屋から微かに白い光が漏れている。
一縷の望みを右手に込めて。
ユナはガラス戸を叩いた。
トントントントン。
「センセイ!…蓮センセイ…」
お願い。
出てきて、…センセイ。
胸の前で冷えた手を組み、ユナは祈るように佇んでいた。