天使で悪魔なセラピスト
第1章 トラウマ
「可愛い顔して釣れないなあ。…ねえ、ちょっと待ってよ君!」
背後からなおもそう迫ってくる男に、ユナは恐怖を覚え、ぱっと駆け出した。
ユナは顔をひきつらせたまま脇目も振らずに夢中で駆けた。
コンビニか何かがあれば飛び込むことができるのに、生憎辺りにはそんな店が一軒もなく、民家しか見当たらなくて。
やだ、もう!
誰か助けてよ…
恐怖で込み上げてくる嗚咽を堪えながら走って走って、やがて側道に、個人病院のような佇まいをした建物が見えた。
!
咄嗟にユナはその建物に駆け寄り扉を押し開け、中に飛び込んだ。