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あなたが消えない

第21章 彼の愛人、私の愛人

週に一度、仕事の休憩時間に私の部屋に来て、一緒に食事をする。

月に一度、多い時で二度、二人で出掛ける。

私と翔の仕事帰りに時々、喫茶店でお茶をして、この先も二人の関係が永遠で有る事を、言葉で確かめ合う。

翔は、私が聞かない限り一切自分の家庭内の話はしない。

私もそう。

旦那の和男は、仕事に追われる日々で、このアパートにはあれから一度もまだ、戻って来た事はない。

「翼、俺たちずっと一緒だからな」

「死ぬ時も一緒よ」

「死んでからも一緒だ」

翔は私に言うの。

死ぬ時まで、奥さんを道ずれには出来ないと。

あまりにも可哀想なのだからと。

でも、私なら道ずれにしてもいいそうだ。

と、言うよりも死ぬなら私と一緒に死にたいから。

そうすれば、死んだ後も、生まれ変わる時も、同じように思えるから。

生まれ変わって、同じ時代を生きて、再び会う時には、どうか遅すぎた出逢いではなく。

あなた独り。

私独りで、ありますように。

背負うものもなく、毎日毎時間を、愛するあなたと共に送れますように。

私はあなたの愛する人。

あなたの愛する人は私。

どうかいつまでも、あなたと私は永遠で終わらない、消えない関係が、続いていきますように。

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