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あなたが消えない

第21章 彼の愛人、私の愛人

私の最も愛する、永津 翔へ。

私は、あなたの決めたこの距離から、あなたの愛をいつも感じて、受け止めています。

耳に残るあなたの声を、身体中で感じながら、強く思う事。

「翔、いつも支えてくれてありがとう…愛してる」

あなたの大切に隠し持った愛を。

奥さんには申し訳ないけど。

私だけが独り占めして。

あなたはまた、今日も身勝手に私を抱くために、ここへと足を運ばせる。

私の「愛してる」の言葉を、心に忍ばせながら。

あなたが消えないのは、間違いで。

あなたを消さない、消したくない。

私の掛けがえのない、大切なあなた。

201号室の扉を開けて、

「いらっしゃい、翔」

翔はゆっくり玄関に入り込み、鍵を掛ける。

愛してる。

あなたを。

愛してる。

ずっと。

愛してる。

そう、永遠の仲でいようと誓い合ったの。

そしてまた部屋を出て行く翔に、私が甘えながら言う。

「仕事頑張ってね。行ってらっしゃい」

キスをして、静かに笑ってくれる。

振り返り際に、

「行ってくるよ。鍵、ちゃんと掛けておけよ」

優しい言葉を当たり前のように、私だけに掛けてくれる翔がいた。


『完』

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