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あなたが消えない

第4章 キスマーク

気まずくて、私はそれから話せなくなった。

なのに永津さんは平然と、いやむしろ堂々としていた。

よその人にすれ違っても、

「こんばんわ」

頭を下げて言う。

「こんばんわ」

まるで、私の旦那様のように振る舞っているような。

そして、

「じゃあ、また」

そう言って、あっさり玄関の扉を閉められた。

私は何となく、お風呂に入った時に鏡に写る、もう一人の他人から見た私を見つめた。

さっきの出来事を思い出す。

永津さんとの…。

あの人、一体何なのだろう。

寂しいからって、いくら何でもあんな事を急にしないでしょ。

友達でも恋人でも、もちろん妻でもないのに…。

…えっ…。

私は再び鏡をしっかり見て、自分のうなじを確認した。

あの人、嘘でしょ!

キスマークが付けられていた。

こんなの、和男にバレたら大変だよ。

なっ、何してくれるの、あの人。

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