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あなたが消えない

第14章 身勝手に抱く

二回目のセックスは、少し間を置いて、ベッドの中でした。

私の時間を気に掛けて、翔は早めに済ませた。

帰りの車の中で、翔は私の手をずっと握ったまま。

「翼は、あの旦那と一緒で幸せ?」

翔にまさか、そんな質問されるとは思わなかった。

でも、その質問には答えたくない。

「翔は?」

私は聞き返す。

「俺は別に、今の生活に何ら不満はないからね」

それって……。

「奥さんと子どもと一緒で…」

幸せなの?

本当はそう聞き返したいのに。

「幸せなんだね」

「……」

翔は、しばらく黙ったまま遠くを見て言った。

「そうだな」

それを聞いて、とっさに出た言葉。

「私も幸せだよ」

「……」

何でまた黙るの?

翔だって、幸せな癖に。

私だって同じだと言ってもいいでしょ?

「順風満帆でしょ。結婚して、夫婦に溝が出来る寸前に、子どもが出来て、また溝がなくなる。極々、普通の在り来たりな生活」

「翔はそれを望んでるんだ。私には旦那とセックスするな、子どもを造るなって言った癖に?…勝手な男」

私は何だか腹が立って、握られた手をほどこうとすると、

「勝手だよ、俺は。本当の俺は身勝手だ。自分のしたいように、やりたいようにやる。普通の在り来たりな生活なんか、心から望んじゃいない」

「その反動で私を、この先も身勝手に抱くの?奥さんと子どもと幸せな癖に…っ…、私にそれを見せつけて…抱くの?」

私はギュッと心が痛くなって、俯いた。

「…そうだ」

私は、そんなフォローのない一言に、

「最低!」

軽蔑した。






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