あなたが消えない
第15章 初出勤日の夜
その日の夜は、翔はいつもの時間に帰宅はしなかった。
その代わり、和男が早めに帰宅する。
「おかえり」
「ただいま」
和男は、どこか疲れた顔をしていた。
昨晩の事が有るから、あまり下手に声を掛けたくない。
責められたら、嘘を上手に付けないから。
和男はネクタイを緩めながら、やはり聞いてきた。
「朝帰りか。昨日何か有ったのか?」
うぅっ…!
な、何て言えばいいのだろう。
「メールも何もなかったろ?」
「うん、ごめんね。急に実家に戻る事になって」
「そっか」
和男は疑うまでは無かったが、私の急な行動に、ただ尋ねただけだった。
「お父さんが調子を崩して、お母さんが慌てちゃってさ。そんなだから、私も慌てて実家に戻ったの。ついついメールで連絡するの忘れちゃった。本当にごめんね」
私は、和男に手を合わせて拝んだ。
「いいよ、俺も午前様近い時間に帰ったから。逆に、ちょうど良かったのかもな」
「午前様?大丈夫?あ、でもだから今日、早く帰って来れたの?」
「そうそう」
そうなんだ。
そんな事は、どうでもいい。
21時を過ぎても、午前0時を過ぎても、翔は家に戻って来ない。
私は不自然なまでに、床に耳を引っ付けて、下の音に聞き耳を立てていた。
もしかして、奥さんの元へ今夜も会いに行ったのかな。
もうすぐ戻ってくるなら、わざわざ会いに行く必要ないじゃない。
そんな事したら、更に私がつらくなるんだと、どうして分かってくれないの?
その代わり、和男が早めに帰宅する。
「おかえり」
「ただいま」
和男は、どこか疲れた顔をしていた。
昨晩の事が有るから、あまり下手に声を掛けたくない。
責められたら、嘘を上手に付けないから。
和男はネクタイを緩めながら、やはり聞いてきた。
「朝帰りか。昨日何か有ったのか?」
うぅっ…!
な、何て言えばいいのだろう。
「メールも何もなかったろ?」
「うん、ごめんね。急に実家に戻る事になって」
「そっか」
和男は疑うまでは無かったが、私の急な行動に、ただ尋ねただけだった。
「お父さんが調子を崩して、お母さんが慌てちゃってさ。そんなだから、私も慌てて実家に戻ったの。ついついメールで連絡するの忘れちゃった。本当にごめんね」
私は、和男に手を合わせて拝んだ。
「いいよ、俺も午前様近い時間に帰ったから。逆に、ちょうど良かったのかもな」
「午前様?大丈夫?あ、でもだから今日、早く帰って来れたの?」
「そうそう」
そうなんだ。
そんな事は、どうでもいい。
21時を過ぎても、午前0時を過ぎても、翔は家に戻って来ない。
私は不自然なまでに、床に耳を引っ付けて、下の音に聞き耳を立てていた。
もしかして、奥さんの元へ今夜も会いに行ったのかな。
もうすぐ戻ってくるなら、わざわざ会いに行く必要ないじゃない。
そんな事したら、更に私がつらくなるんだと、どうして分かってくれないの?