紅蓮の月~ゆめや~
第6章 第二話【紅蓮の花】 二
「私は、この最後の瞬間(とき)をそなたと過ごせて良かったと心から思うている」
「殿―」
凛子は万感の想いを込めて義経を見上げた。義経を取り巻くあまたの人々の中で、たった一人、凛子はこの言葉を耳にすることができたのだ。最期のときを凛子と二人きりで迎えることを幸せだったと義経は言った。いまのわの際に、義経は最高の台詞を凛子にくれた。それだけで、凛子は幸せだった。これ以上の何を望むというのだろうか。
「初めてめぐり逢うた時、そなたはまだ十にも見たぬ子どもであった。忠衡殿と私の後をいつもちょこちょことついて歩く妹のようにしか思うてはおらなんだが、いつしか忠衡殿と同様、美しう成長したそなたを眩しく見つめるようになっていた。凛子、愛している」
そのひと言は、凛子にとって、まさに至上の言葉であった。
「殿―」
凛子は万感の想いを込めて義経を見上げた。義経を取り巻くあまたの人々の中で、たった一人、凛子はこの言葉を耳にすることができたのだ。最期のときを凛子と二人きりで迎えることを幸せだったと義経は言った。いまのわの際に、義経は最高の台詞を凛子にくれた。それだけで、凛子は幸せだった。これ以上の何を望むというのだろうか。
「初めてめぐり逢うた時、そなたはまだ十にも見たぬ子どもであった。忠衡殿と私の後をいつもちょこちょことついて歩く妹のようにしか思うてはおらなんだが、いつしか忠衡殿と同様、美しう成長したそなたを眩しく見つめるようになっていた。凛子、愛している」
そのひと言は、凛子にとって、まさに至上の言葉であった。