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紅蓮の月~ゆめや~

第6章 第二話【紅蓮の花】 二

 人々は館が焼け落ちる寸前、ひそかに義経が最愛の女人を連れて、いずこへとも知れず姿を消したのだと影で囁き合った。稀代の英雄義経は確かに死んだ。その事実に間違いがあろうはずもなかったけれど、死んだはずの義経が実は生きているのだという噂がまことしやかに流れていった。
 時に文治五年(一一八九年)、源義経は三十歳、凛子は二十二歳になっていた。


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