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紅蓮の月~ゆめや~

第8章 第三話 【流星】 プロローグ

 おばさんは一個十円の飴玉を必ず一個だけ余分に袋に入れてくれる。美都はおまけしてくれたその飴をなかなか食べる気になれなかった。家に帰っても宝物のように大切にして、指でつまんで眼の前にかざしては色んな角度から眺めていたものだ。透き通った飴の表面に砂糖がまぶしてあって、陽の光にキラキラと光って見える大玉の飴は本当に宝石のように見えた。
 駄菓子屋の隣の豆腐屋には、六十過ぎくらいのおじさんがいた。奥さんと二人で朝早くから店を開けていて、美都は母に頼まれて二つ下の弟と何度もおつかいにいった。美都が行くと、「ちゃんとおつかいができるのか、偉いなぁ」とおじさんは、少し大目の豆腐を持っていった器に入れてくれた。その後でおじさんが弟を抱き上げて肩車をすると、弟はキャッキャッとはしゃぎ声を上げた。そのやり取りを奥さんが優しそうな眼で見ていた。

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