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紅蓮の月~ゆめや~

第8章 第三話 【流星】 プロローグ

 美都は、無意識の中(うち)にかつて駄菓子屋や豆腐屋であった店の前で立ち止まっていた。今も瞼に駄菓子屋のおばさんの笑顔や豆腐屋のおじさんの一徹な顔が浮かんでくる。だが、眼を開いたそこにあるのは、とっくに辞めてしまった空き店だけだ。
 若い人が隣の大きな町へ働きに出ていったまま帰ってこず、次第にこの町の住人が高齢化してきているとは聞いたことがある。だが、これほどまで町がさびれているとは想像だにしなかった。
 美都は込み上げてくる哀しみに耐えかねて、小さな吐息を洩らした。その時、豆腐屋から少し離れたはす向かいの店に眼が止まった。静まり返った商店街の中でたった一軒、その店だけがまだ細々と営業を続けているようだ。美都は記憶の糸を懸命に手繰り寄せようとした。

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