
紅蓮の月~ゆめや~
第9章 第三話 【流星】 一
兼家の憎めないのは、開き直るということがないところだ。美耶子が町小路の女について既に情報を得ていることも薄々は察している様子で、しきりに美耶子の出方を窺っている。多くの女の間を渡り歩きながらも、各々の女のご機嫌取りにもまた労を惜しまない。 それもまた兼家が女性にもてる所以だろう。
しばらく庭を見ていた兼家は、コホンと咳払いをした。いかにも、わざとらしい。
美耶子は兼家を真っすぐに見据えた。
「お風邪でも召されましたか」
「い、いや、何ほどのことはない。ちと夏風邪でも引いたのかもしれぬ」
兼家は口ごもりながら言うと、気まずげに美耶子から視線を逸らした。
しばらく庭を見ていた兼家は、コホンと咳払いをした。いかにも、わざとらしい。
美耶子は兼家を真っすぐに見据えた。
「お風邪でも召されましたか」
「い、いや、何ほどのことはない。ちと夏風邪でも引いたのかもしれぬ」
兼家は口ごもりながら言うと、気まずげに美耶子から視線を逸らした。
