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紅蓮の月~ゆめや~

第9章 第三話 【流星】 一

「思わせぶりなのは、一体どちらでしょう。
お情けでたまに思い出したようにおいで下さらなくても、結構でございます。こんな私に飽きてお嫌いになられたのなら、いっそのこときれいさっぱりと棄てて下さいませ。その方がまだ世間の物笑いにならなくて済みますから」
 いつまでも愛の冷めた良人に執着していては、それこそ本当に世間の笑い者になってしまう。このまま夜離(よが)れが続いて、やがては見捨てられるほどなら、今、別れて欲しいと美耶子は半ば本気で思った。
 と、その言葉に兼家が眉をつり上げた。
「私と別れてどうするつもりだ? さては、そう言うそなたこそ、私の他にどこぞに通わせる男ができたのであろう」

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