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紅蓮の月~ゆめや~

第10章 第三話 【流星】 二

 昨夜、この女房は良人とどのような甘い夜を過ごしたのであろうか。
 そう考えて、美耶子はカッと身体が火照った。我ながら、何というはしたないことを想像するのだろうと呆れてしまう。
 美耶子の父倫寧は謹厳実直を絵に描いたような人間で、むろん当時の不文律として何人かの妻を持っているけれど、娘たちは厳格にしつけた。殊に男女のこと、色恋については女は慎み深くあるべきだと教え込んできた。
 ゆえに、美耶子は兼家が閨で大胆な肢体を取れと言っても、嫌がった。
―もっと脚を開いて。
 耳元で熱い吐息混じりに囁かれても、首を振るばかりで、ついに焦れた兼家が半ば無理に脚を開かせると、うっすらと涙ぐむ始末だった。

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