
紅蓮の月~ゆめや~
第10章 第三話 【流星】 二
美耶子が乳飲み子の頃から傍近く仕えてきた乳母は、いまだに美耶子を幼いときのままに「姫様」と呼ぶ。
美耶子の前に膳を並べながら、乳母がちらりと女房を見た。
「いつまでも詰まらない噂話などするものではありませんよ。女房たちの間だけの他愛もない噂話なともかく、姫様にまでくだらない話をお聞かせして、考えのないのにもほどがあります」
たしなめるような口調でいさか強く言われ、若い女房の顔がスウと白くなった。
「も、申し訳もござりませぬ」
女房は色を失い、這々の体で角盥を持ち退っていった。乳母は長年の勘で美耶子の異変を感じたらしい。気遣わしげに訊ねた。
「何かございましたか? また、姫様に詰まらぬ話をお聞かせしてしまって」
美耶子の前に膳を並べながら、乳母がちらりと女房を見た。
「いつまでも詰まらない噂話などするものではありませんよ。女房たちの間だけの他愛もない噂話なともかく、姫様にまでくだらない話をお聞かせして、考えのないのにもほどがあります」
たしなめるような口調でいさか強く言われ、若い女房の顔がスウと白くなった。
「も、申し訳もござりませぬ」
女房は色を失い、這々の体で角盥を持ち退っていった。乳母は長年の勘で美耶子の異変を感じたらしい。気遣わしげに訊ねた。
「何かございましたか? また、姫様に詰まらぬ話をお聞かせしてしまって」
