
紅蓮の月~ゆめや~
第10章 第三話 【流星】 二
兼家に言ったように尼にでもならない限り、美耶子はこの怖ろしい業から逃れられない。否、たとえ世捨て人となったとて、生きていれば、およそ愛欲という世のしがらみから解き放たれることは難しい。この世に存在する限り、美耶子は兼家を愛し続けるだろうから。落飾して上辺だけは世捨て人となったからといって、美耶子の中から兼家の面影が消えなければ、美耶子は永遠に煩悩に囚われたままだ。
「あの後、殿は町小路の女の許で夜を過ごされたのですね」
美耶子は自分に言い聞かせるように呟いた。
その時、部屋の几帳をかき分けるようにして、乳母が入ってきた。
「姫様、朝餉を持って参りしたよ」
「あの後、殿は町小路の女の許で夜を過ごされたのですね」
美耶子は自分に言い聞かせるように呟いた。
その時、部屋の几帳をかき分けるようにして、乳母が入ってきた。
「姫様、朝餉を持って参りしたよ」
