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紅蓮の月~ゆめや~

第10章 第三話 【流星】 二

美耶子の中にふとそんな想いが兆した。やはり、兼家の妻として、あの男の傍にいて、相変わらず愛欲の渦の中でもがき苦しんでいるのだろうか。まだまだ遠い先の話のように思うけれど、実際には瞬きをするほどの早さの間の出来事かもしれなかった。
 乳母は美耶子にとっては実の生母よりも近しい、頼りになる存在だ。美耶子は乳母の髪に降りた白いものをぼんやりと眺めていた。
 流れ星はやはり不吉なることの前触れなのだろうか―、昨夜、兼家を迎える直前に見た流星が突如として瞼に一瞬蘇り、消えた。

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