紅蓮の月~ゆめや~
第11章 第三話 【流星】 エピローグ
そして、いつか歳を取って長い自分の歩いてきた道を振り返った時、美耶子のように静かな凪いだ心持ちになることができたなら―。晩年の美耶子の心境は確かに諦めを伴ったものではあったけれど、愛ゆえに悩み生き抜いた女の半生はけして辛く苦しいものばかりではなかったはずだ。「夢」の中で美耶子の記憶を辿った美都には誰よりそれがよく判る。たとえ一刻(いっとき)とはいえ、良人を愛し、また愛された記憶は、妻として女としてこの上なく満ち足りた幸せなものだった。悩んだ末に美耶子が辿り着いた境地こそ、愛欲の果てにある悟りにも似た静謐さなのかもしれない。
「嘆きつつ・・・」の歌は、まさにそんな長きにわたっての愛欲の葛藤の果てに生み出されたものなのだ。
いずれにしろ、今の美都にはまだ遠い、想像するのも難しい境地だ。
「嘆きつつ・・・」の歌は、まさにそんな長きにわたっての愛欲の葛藤の果てに生み出されたものなのだ。
いずれにしろ、今の美都にはまだ遠い、想像するのも難しい境地だ。