紅蓮の月~ゆめや~
第11章 第三話 【流星】 エピローグ
美都は肩に着せかけられていた袿を肩から滑らせた。しっくりと肌に馴染んだような感触に、もう少し触れていたいと思ったけれど、きちんと畳んで「ゆめや」の女主人に返した。
「色々、ありがとうございました」
心を込めて礼を言い頭を下げる。
―帰ったら、もう一度良人と話し合ってみます。やり直すことができるのならば、やり直してみようと思います。
その後に続く台詞は呑み込んだ。
眼前の美しい女主人が二十年前にこの「ゆめや」にいた女性と同じ人物であったかどうか、そのことは最早美都にとって、どうでも良いことのように思われた。大切なのは、この小さな町の片隅に「ゆめや」が今も変わらずあったこと、美都が不思議な力に吸い寄せられるようにしてこの店に来て、一枚の着物にめぐり逢ったことだった。
「色々、ありがとうございました」
心を込めて礼を言い頭を下げる。
―帰ったら、もう一度良人と話し合ってみます。やり直すことができるのならば、やり直してみようと思います。
その後に続く台詞は呑み込んだ。
眼前の美しい女主人が二十年前にこの「ゆめや」にいた女性と同じ人物であったかどうか、そのことは最早美都にとって、どうでも良いことのように思われた。大切なのは、この小さな町の片隅に「ゆめや」が今も変わらずあったこと、美都が不思議な力に吸い寄せられるようにしてこの店に来て、一枚の着物にめぐり逢ったことだった。