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紅蓮の月~ゆめや~

第1章 プロローグ

 そう言われてみても、実幸は今一つ腑に落ちない。実幸は中学一年のヴァレンタインでで初めて強士に告白したとき以来、ずっと強士への想いは変わらない。強士は当時から野球部のピッチャーとして女の子から熱い視線を集めていた。だから、実幸の他にも強士にチョコレートを上げた子はたくさんいたのに、正直、何で強士が実幸を選んだのかは理解できない。
 でも、この四年間、実幸は自分でも強士とはうまくやってこれたと思う。休日には映画館へ行ったり、時には図書館でテスト勉強をしたり―、スポーツだけでなく勉強も学年で常に上位五人の中、トップクラスにいる強士は実幸にとって心強い家庭教師でもあった。
 実幸は強士との付き合いに何の問題もないと思っていたけれど、実は、強士の方はそうでもなかったのかもしれない。彼氏と彼女だと思い込んでいたのは実幸の方だけで、強士の気持ちはとっくに冷めていたのだろう。

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