紅蓮の月~ゆめや~
第13章 最終話 【薄花桜】 一
それでも小文は去ってゆく親子連れに向かって丁重に頭を下げた。
「日々の暮らしに倦んだら、また、おいでなさいませ。うちは夢を売る店、お客様にお望みの品を着て頂いて、いっときなりとも素敵な夢を見て頂くことを信条としております」
これは、小文の商いの心得でもある。「ゆめや」を訪れる客に気に入った着物を選んで貰い、それを身にまとうことでたとえ一瞬でも幸せな時を過ごして、束の間の夢を見て貰えたら―。日々の暮らしの憂さを綺麗な着物を着ることでわずかなりとも忘れられたなら。
小文はそう願い、店を「ゆめや」と名づけた。「ゆめや」には小文の「夢」がたくさんつまっているのだ。そして、その夢を共に見るのは最愛の良人治助なのだ。小文は何とかして治助を少しでも生き長らえさせてやりたかった。
「日々の暮らしに倦んだら、また、おいでなさいませ。うちは夢を売る店、お客様にお望みの品を着て頂いて、いっときなりとも素敵な夢を見て頂くことを信条としております」
これは、小文の商いの心得でもある。「ゆめや」を訪れる客に気に入った着物を選んで貰い、それを身にまとうことでたとえ一瞬でも幸せな時を過ごして、束の間の夢を見て貰えたら―。日々の暮らしの憂さを綺麗な着物を着ることでわずかなりとも忘れられたなら。
小文はそう願い、店を「ゆめや」と名づけた。「ゆめや」には小文の「夢」がたくさんつまっているのだ。そして、その夢を共に見るのは最愛の良人治助なのだ。小文は何とかして治助を少しでも生き長らえさせてやりたかった。