紅蓮の月~ゆめや~
第14章 最終話 【薄花桜】 二
あの日から三カ月後のある夏の夕暮れ、治助はひっそりと眠るように息を引き取った。
苦しみもせず、安らかな最期だった。医者の言うとおり、治助はその年の夏を越すことはできなかった。奇跡は二度は起こらなかったのだ。
それでも、治助は最後まで明るく、逆に哀しみに暮れる小文を労り力づけるほどであった。桜の花が散り、春が逝き過ぎると、都には直に猛暑の夏がやって来る。ひとたびは落ち着いた治助の病は夏になって、再び悪化の一途を辿った。
そして、最後は恋女房の小文に看取られながら、蝋燭の炎が消えるように、安らかに逝った。最後まで精一杯生きようとして迎えた死であった。
苦しみもせず、安らかな最期だった。医者の言うとおり、治助はその年の夏を越すことはできなかった。奇跡は二度は起こらなかったのだ。
それでも、治助は最後まで明るく、逆に哀しみに暮れる小文を労り力づけるほどであった。桜の花が散り、春が逝き過ぎると、都には直に猛暑の夏がやって来る。ひとたびは落ち着いた治助の病は夏になって、再び悪化の一途を辿った。
そして、最後は恋女房の小文に看取られながら、蝋燭の炎が消えるように、安らかに逝った。最後まで精一杯生きようとして迎えた死であった。