紅蓮の月~ゆめや~
第14章 最終話 【薄花桜】 二
いまわの際の時、小文が込み上げてくる涙をこらえていると、治助が苦しい息の下から言った。
―最後に小文の笑った顔を見てえんだ。小文、俺にお前の笑顔を見せてはくれねえのかい。
治助は震える手を伸ばし、小文の頬を流れ落ちる涙の雫をそっと指で拭った。
小文は何とか微笑もうとしたけれど、それは成功したとはいえなかった。奇妙に歪んだ泣き笑いの表情(かお)になった小文を見て、それでも治助は笑った。
―俺はお前とめぐり逢えて、幸せだったよ。
短い間だったが、お前と夫婦(めおと)として暮らせて、良かった―。
それが治助の最後の言葉になった。
小文はまだ温もりのある治助の身体に打ち伏して泣きじゃくった。
―最後に小文の笑った顔を見てえんだ。小文、俺にお前の笑顔を見せてはくれねえのかい。
治助は震える手を伸ばし、小文の頬を流れ落ちる涙の雫をそっと指で拭った。
小文は何とか微笑もうとしたけれど、それは成功したとはいえなかった。奇妙に歪んだ泣き笑いの表情(かお)になった小文を見て、それでも治助は笑った。
―俺はお前とめぐり逢えて、幸せだったよ。
短い間だったが、お前と夫婦(めおと)として暮らせて、良かった―。
それが治助の最後の言葉になった。
小文はまだ温もりのある治助の身体に打ち伏して泣きじゃくった。