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紅蓮の月~ゆめや~

第3章 紅蓮の月 二

 信長の顔が近づいてくるのを帰蝶はぼんやりと見つめた。唇と唇が重なり、軽い口づけが次第に深く烈しいものになってゆく。信長にそっと夜具の上に押し押され、帰蝶は眼を閉じた。帯が解かれ、寝衣の前が開かれる。
衣ずれの音が夜の底に艶めかしく響いた。
 信長は帰蝶が想像していた以上に優しかった。初めての帰蝶をけして手荒に扱わず、一つ一つの行為を進める毎に、優しい言葉を熱い吐息と共に耳許で囁いた。確かに女の扱いには手慣れてはいるようであったが、信長の優しさや労りは心からのものであることが判った。そのことは帰蝶を不快にはせず、むしろ安堵させた。信長は実に巧みに、しかし、さりげなく帰蝶の恐怖心や不安を追い払った。

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