
紅蓮の月~ゆめや~
第5章 第二話【紅蓮の花】 プロローグ
そんな二人を泰衡は冷たい眼で遠くから眺めていたものだ。義経と親しかった忠衡の乳母子であった関係で、凛子もまた幼い時分より義経と顔見知りであった。義経より八歳下の凛子は義経の後を妹のようについて回ったものだ。小さな胸に芽生えたほのかな思慕が激しく燃え盛る恋の炎になるまでに時間は要さなかった。
義経が鎌倉に発つ間際、想いを打ち明けた凛子に義経は「待っていてくれ」と言った。そのたった一言を大切な宝物のように抱きしめて、凛子は義経を待ち続けたのだ。一体、いつ帰るかも判らぬ恋しい男を待った。
果たして、義経は兄に疎まれ、追放されるるという最悪の形でこの平泉に戻ってきた。帰ってきて哀しい再会を果たした後、凛子は義経の側室となった。義経の現況を思えば、けして素直に歓べる帰郷ではなかったけれど、漸く幼い頃の想いが叶って愛しい男と結ばれたのだ。ささやかな幸せの中に凛子はいた。
義経が鎌倉に発つ間際、想いを打ち明けた凛子に義経は「待っていてくれ」と言った。そのたった一言を大切な宝物のように抱きしめて、凛子は義経を待ち続けたのだ。一体、いつ帰るかも判らぬ恋しい男を待った。
果たして、義経は兄に疎まれ、追放されるるという最悪の形でこの平泉に戻ってきた。帰ってきて哀しい再会を果たした後、凛子は義経の側室となった。義経の現況を思えば、けして素直に歓べる帰郷ではなかったけれど、漸く幼い頃の想いが叶って愛しい男と結ばれたのだ。ささやかな幸せの中に凛子はいた。
