紅蓮の月~ゆめや~
第5章 第二話【紅蓮の花】 プロローグ
義経の寵愛も厚かった静は鶴ヶ丘八幡宮で義経を恋い慕う唄を謳いながら舞ったことで頼朝を激怒させ、頼朝の妻政子のとりなしで何とか事なきを得た。その後、静は義経の子まで生んでいるのだ。子どもは男であったため、殺され由比ヶ浜に棄てられたというが、少なくとも凛子が遠く離れた平泉で一人義経を待ち続けている最中、義経は他の女性を愛していた。
それでも、凛子は静や義経の妻を羨ましいとも思わない。今、義経の傍にいるのは凛子ただ一人なのだ。あれほど熱愛した静とも別れ、正室をも伴わず義経はただ一人平泉まで落ち延びてきた。亡き秀衡から与えられたこの衣川の館で凛子はたった一人の「義経の妻」として義経に仕えている。それだけで十分であった。
しかし、頼朝に殺されそうになりながらも、なお義経が慕ってやまない頼朝には言いようもない妬心を感じた。
それでも、凛子は静や義経の妻を羨ましいとも思わない。今、義経の傍にいるのは凛子ただ一人なのだ。あれほど熱愛した静とも別れ、正室をも伴わず義経はただ一人平泉まで落ち延びてきた。亡き秀衡から与えられたこの衣川の館で凛子はたった一人の「義経の妻」として義経に仕えている。それだけで十分であった。
しかし、頼朝に殺されそうになりながらも、なお義経が慕ってやまない頼朝には言いようもない妬心を感じた。