テキストサイズ

きょうどうせいかつ。

第5章 かもくなものは あわてない。



勇者は姫との話を終え、自分の部屋に戻ってきていた。

壁に立て掛けてある『伝説の剣』が、なんなんだかちっぽけな物に思えてきた。

姫の泣き声は相変わらず聞こえてくる。

かれこれ二時間、ずっとこんな調子なのだ。

罪悪感がない、とは言えない。

むしろ罪悪感ばかりが募ってくる。

勇者も、王女様が亡くなったと聞いたとき、同じように泣いたのだが、あれほどではなかった。

どれだけ泣いても、気がすまないのだろう。

いくら、魔王がなだめているとはいえ、こればっかりは……。

──声、嗄れはじめているな。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ