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きょうどうせいかつ。

第6章 ひめはゆっくり かくせいする。


姫はゆっくりした動作で椅子からおり、妖艶な動きで勇者の元まで歩く。

「……ねえ、勇者様」

上目遣いで勇者の手を握り、空いている手で勇者の腰をつーっとなぞる。

「お願い、聞いていただけませんの……? 」

勇者の額に汗が流れ落ちる。
身体に力が入らない。

「し、しかし………」

「大丈夫。私と一緒なら、きっとなんでもできます……」

姫と目があう。
真っ赤な瞳がじっと勇者を見つめていた。

頭がぼーっとする。
何も考えられない……。

「お願い、しますわ……」

姫の目を見ていると、身体が熱くなって、考えがまわらない。

「できる……でしょうか」

「ええ。大丈夫。私がいる」

そういって、姫は勇者の手を優しく持ち上げ、自らの胸に持っていった。

「ね? 大丈夫」

──ああ。
もうどうだっていいや。

このままでいられるなら──。

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