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きょうどうせいかつ。

第7章 そしてふたたび よるになる。


ごめんなさい、とすぐに謝った。

しかし、青年はじっと彼女をにらみ、一口こういった。

「魔王は、女だったのか──」

魔王に姫がさらわれたという情報は、国の隣国くらいにしか広まっておらず、遠い国からきた旅人は、魔王の存在こそ知っていたが、姫の存在は知らなかった。

それから青年がやったことは、彼女の考え方を変えることになった。

青年は近くにあった燭台から蝋燭を一本取り、彼女のドレスに火をつけたのだ。

「──あ」

火がついたときの姫の反応はこの程度だった。

あ、間違えた。

そう思った。

めらめらと燃える炎のなか、赤く灯し出された青年の顔は、笑顔をで歪みきっていた。

彼女は、火を止めるよりも先に、反射的に青年の喉を圧迫した。もちろん、魔力を使って。

青年は苦しそうにもがき、泡を吹きながら死んだ。

青年が死んだのを確認した後で、火を消して、破損した箇所を修復した。

彼女は泣いていた。


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