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ふたりのカタチ

第6章 出せない答え

弟は式の準備で慌ただしくなり
私はそれと引き換えに
店に出ることが多くなった

かずちゃんは相変わらず忙しいらしく
『ピアノの練習がはかどらないよ』と
弟に話していたらしい

あの日
自分のマンションに戻ったよと言いながら
一度だけ私に電話をしてきた
『ごはん美味しかったよ、また作ってね』
『オレの番号ちゃんと登録しといてね』って

それっきり
私のケータイに登録された番号へは
私からかけることもなく
かずちゃんからも係ってくることはなかった

テレビで見ているかずちゃんは
楽しそうで
かわいくて
『こんな人に好きだと言われたの?』って
いつまでたっても悩み
出ない答えをぐるぐる考えていた

『頭の中オレのことだらけにしていいよ』
かずちゃんの言葉が不意によぎった…

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