
愛して、愛されて。
第6章 狂気の陰
ガラリと開いたドアから、伊勢谷先生の姿が消えるのを最後まで見つづけて、
ホッと息をついた。
「…まいったな。」
授業が終わり、ガヤガヤと騒がしくなる教室。
その中で、俺は椅子に倒れ込む様に腰を下ろした。
――――ダメだ。
俺、本当おかしい。
雄飛さんに恐怖を感じたあの日から。
恭に忠告された、あの日から。
伊勢谷先生への不信感が、なんらかの瞬間に思い出される。
いや、考えすぎだろ。
さっきだって、結局軽い冗談だったし。
きっと、敏感になってるだけだ。
兄さんのせいで、どうしても思考が悪い方向に行きがちなだけだ。
「…落ち着けよ。」
まず、伊勢谷先生を疑う時点でおかしいんだ。
生徒から慕われて、他の先生達からも慕われてんだ。伊勢谷先生は。
そんな人のこと、疑うなんて。
俺、相当まいってんだなー。
