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背中デ愛ヲ、囁キナサイ

第1章 暗闇ノ中デ


 僕はそれから、彼女の髪をくるくると指で弄びながら、暗闇の中でどこを見つめるわけでもなく、ただ、ぼーっと、この虚しい感覚に思いを馳せた。

 いつだったかな……

 前にも似たような感覚を覚えたことを思い出そうと、ほんの少し、自分の過去を覗き込むことにした。


 ああ……

 思い当たるふしが、あまりに青い思い出であることに、自分でも驚いた。

 この歳になってもまだ、あんなことを引きずっていたのか、と。

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