背中デ愛ヲ、囁キナサイ
第2章 月明カリノ下デ
自分にそういい聞かせて、胸元を握る左手に力を込めると、爪が胸元の皮膚をえぐる感覚があった。
この痛みを
忘れてはいけない……
痛みで体に力が入ったと同時に、彼の鼻先がわたしのほてった頬に触れ、わたしの唇を求めるそぶりを見せてきたけれど、今のわたしには、それに応えるだけの心の余裕はなくなっていた。
わたしの体が痛みで少し固くなったことに気づいたのか、彼はそれ以上、唇を求めては来なかった。
そして訪れた再びの沈黙。
今度は彼の呼吸さえ、小さく遠くに聞こえてしまう。
わたしは嫌な予感に、自分の皮膚を握り締めた手に力を込め続けるしかできなかった。