背中デ愛ヲ、囁キナサイ
第2章 月明カリノ下デ
「ねえ、話したくないならそれでも構わないんだけど、その胸の傷、なんなのか教えてくれない?」
彼は自分の恋愛を話し終えると、背中でそう切り出した。
傷のこと?
なんて言えばいいんだろう。
伝えるには、わたしも過去を振り返らなければならないが、その後の虚しさに一人で堪えるだけの気力が、今のわたしにはないような気もする。
それに、伝えたところで、わたしと彼のこの先が変わるとも思えない。
そんなことを考えて、いつまで経っても無言のわたしに嫌気がさしたのか、彼はベッドを離れたようで、目の前に見えていたはずの彼の影は白い壁に消えていた。