テキストサイズ

背中デ愛ヲ、囁キナサイ

第2章 月明カリノ下デ

 これで、おわり……か。

 身支度を整える音がする。

 あの人との別れよりも、胸が軋む。

 何倍も。

 今更に、この人を思う自分の気持ちの深さに気付くって、なんだかとっても情けない。


 “待って”と言えば、あなたなら振り向いてくれますか?

 “行かないで”と言えば、あなたならここに留まってくれますか?


「まゆみ? 今までありがとう。ごめんね……」

 この想いを伝えずに、この人の温もりを手放してしまったら、きっと、もう二度と人を愛そうとは思えない、そんな気がした。

 背中に潤んだ彼の鼻声を聞きながら、わたしが体を起こすと、彼は部屋を出ようとドアに手をかけたところだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ