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側にいられるだけで④【牡丹の花の咲く頃には】

第9章 第二話 【はまゆうの咲く町から】 李家の御曹司

 ただ、今の自分にできるのは、こうやって我が罪を御仏に懺悔することだけだ。
 いや、もしかしたら、祈るという行為そのものですら、キョンシル自身の心を宥めるための一つの行為でしかないのかもしれない。母を裏切っていた罪への贖罪、そのために御仏に祈るだなんて、どこまで自分は身勝手な人間なのだろうと思えば、余計に自己嫌悪に陥りそうだ。
 金色(こんじき)の仏像は、はるか高みからキョンシルを見下ろしている。柔和に細められた目許が誰かに似ているような気がして、キョンシルはハッとした。この双眸は慈心和尚に似ているのだ。その御仏を初めて見た瞬間から、どこかで見たことがあると思っていたのだけれど、そうか、和尚に似ていたのかと改めて合点がいった。

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